各界の第一線で活躍する著名人へのインタビューによる連載コラム“エドックス ラヴァーズ”。プロフェッショナルな仕事へのこだわりや、彼らの愛用ウォッチなどに迫ります。
今月は、アメリカンフットボール最高峰NFLに日本人で最も近い男・プロアメリカンフットボール選手の栗原 嵩選手です。

魅了されたアメリカ

アメフトを始めたきっかけは何ですか?

小学生から中学生まで、野球、水泳、バレーボール、陸上・・・といろんなスポーツをやっていました。のめり込むことなく、どれもすぐ辞めてしまいました。ただ、小さい頃から、スポーツ選手になりたい、スポーツでメシを食えるようになりたい、とは思っていて。中学生の時、TVでNFL決勝スーパーボウルを観て、この選手になりたいと強く思いました。
元々アメリカンカルチャーが好きで、小学生の頃から洋楽を聴いたり、年一回のNBAファイナルやグラミー賞をTVで観るために学校を休むような子供でしたから、いつか住んでみたい国アメリカの一番盛んなスポーツのアメフトに惹かれたのかもしれません。

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日本人未踏の地NFLへの挑戦

アメリカを目指したきっかけ、チャレンジする理由は何ですか?

アメフトを始めた時から、NFL選手になりたいと思って今までずっとやってきました。日本ではトップの自信があったし、今まで日本人では誰もプレーしていない世界、僕がやらなくて誰がやるんだという気持ちが大きかったからです。

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進化し続けるために

プロの現役アメフト選手でありながら、ラグビー選手としての挑戦を始めたのは?

2年前の10月、ラグビー選手の友人から募集情報を聞き、五輪種目でもあるセブンズ(7人制ラグビー)の合宿に参加したのがきっかけです。あたったり交わしたり共通する部分が多い競技ですし、元々ラグビーが好きだったし、アスリートとして自信もありました。別のスポーツから身体の使い方や別の要素を自分の中に取り入れることで、アスリートとしての幅が広げられ、アメフトのレベルも上げられると思いました。アメリカでは複数の競技で活躍する「マルチアスリート」は珍しくなくて、それだけ応用力・総合力が高いアスリートが存在する理由でもあります。

今やれることはすべてやる

プロアメフト選手、ラグビー選手、大学やクリニックでの指導・・・
ハードな日々の原動力は?

日本ではアメフト人口2万人とまだまだマイナースポーツですが、間違いなくスポーツの中で最も面白いスポーツです。そのアメフトの面白さを日本でもっと知ってもらいたいという想いです。日本でのアメフトの価値をもっと上げたい。スポーツ大国のアメリカでは、日本人に馴染みのあるNBAバスケットボールや野球メジャーリーグを抑えて、アメフトが断トツ一番人気です。アメフトにはそれだけの魅力がある。日本のアメフト界ではトップでやっているという自負とプライドも支えになっているのかもしれません。やろうと思えばやれるものですし、時間を作ろうと思えばいくらでも作れますから。

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アメフトへの情熱と使命

現役中に、大学で学生の指導もしているのはなぜですか?

僕は日本では数少ないプロのアメフト選手として、すごくいい経験をさせてもらっていますが、後を継ぐような選手はまだいません。だから、僕が学んだことやいろんな経験を日本の選手たちに還元したい。わざわざゼロからのスタートでなくていい訳ですから。僕にしか伝えられないことがあると思うから、それを伝えていく責任と使命を感じています。そしてそれは、影響力や説得力を持つ現役の今だからこそ、伝えられることがあると思うんです。

大事なことはいつもシンプル

大事にしていること、意識していることはありますか?

これまで様々な岐路に立ちましたが、何かを決断するときは最終的に自分でします。もちろん結論を出す過程では周囲の話も聞いたりしますが、後悔したり人のせいにしたくはないので。結局は自分が、やりたいかやりたくないか、です。

スポーツと人間力

今後の目標は?

アメフトをもっと日本で有名にすることです。そのために日本のXリーグで活躍するのはもちろん、色々なメディアに露出してアメフトの魅力を伝えていき、僕のあとに続く選手をどんどん輩出していきたい。また、セブンズラグビーでも日本代表として試合に出たいし、その先には東京五輪もありますので、そこまでの選手を目指したいです。現在は京都大学、東京学芸大学で指導する一方で、今年から正式に法政大学のコーチにも就任しました。トレーニングや技術だけでなく、よりいろんな角度から後輩に伝えられるように、来年から筑波の大学院でコーチングを専攻して学びます。いい選手がでてきてほしいので、将来的には指導者の道にも興味があります。トップアスリートは人格者だと思っているので、いろんな社会に触れることで人間的にも成長していきたいですね。


栗原 嵩 http://dingo.jpn.com/
Profile

IBMビッグブルー所属、背番号81。1987年11月7日生まれ。駒場学園高校、法政大学卒。180cm、85kg。
法政大学時代に甲子園ボウル制覇、関東学生リーグMVPなどを経験し、卒業後はXリーグ・パナソニックインパルスに入団。
怪我を乗り越え、3年目にNFLへの挑戦を決意し、ボルティモア・レイブンズのキャンプに参加した。
実力が認められ、契約を前提としたトレーニングキャンプへの招待を受けた経験を持ち、日本人で最もNFLに近い選手だと言われている。

Special Thanks:ドームアスリートハウス(DAH) / アンダーアーマー
Photography:Yoshinori Eto
Instagram:@iam_tk_81